『海上トレーダーガード募集』
◆プレイヤーイベント 提供:Julia
“海上トレーダーガード募集"
お久しぶりです。ムーングロウガードのジュリアです。
先日の占い師ワドル氏の事件ではお世話になりました。
実はまた皆さんに依頼したいことがございます。
最近、私たちの町ムーングロウは陸地続きでない島のためかトレーダーの成り手が少なく、他の街々との交易に支障を来たしております。
そのため私たちガードにトレーダーを行うようにとお達しが来ているのですが恥ずかしながら海上で襲撃者に襲われ、荷物を奪われてしまう事件が頻発しております。
つきましてはどなたか護衛を兼ねて私を船に乗せていただけないでしょうか?
PS.
ムーンゲートの使用は収益が落ちるため使用するなという事です。まったく私たち現場の意見も聞いてもらいたいものですが…
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ムーングロウから指定の街までのトレーダーを行うジュリアを護衛・搬送して頂くイベントです。
必要物品:船
登場人物
ジュリア
ムーングロウでガードをしている女性。
誠実実直な性格で職務にも忠実。
プロローグ
“Guards!! Guard!! Guards!!”
『野蛮な行為に後悔するがよいっ!!』*バシューン*
…アンデッドの群れに襲われながら命からがらムーングロウの街に逃げ込んでくる旅人の助けを求める声を聞いた私はいつものようにバルディッシュによる一撃を振るい、アンデッドたちを打ち払った。
「ふぃぃ…、助かりました。ありがとうございます。」
気合が抜けたのだろう。倒れこんだ彼はホっとした笑顔で息をついた。
「いえいえ、お気を付けください。」
大きな怪我はないようであったが念のため傷ついた彼をヒーラーの元に連れて行った後、Mage’s breadで購入したミートパイで遅い昼食をとっていた私に仲間のガードが声を掛けてきた。
「やぁ、ジュリア。お疲れさん。調子はどうだい?」
「えぇ、お疲れ様です。先ほど、お一人をヒーラーへお連れしたところです。」
「そうかい、そうかい。ところでさっき、隊長が君を探していたよ?」
「おや、そうなのですか? ではすぐに向かいましょう。」
「あまりいい話じゃないかもしれないけどね…」
不安な言葉を残し、去っていく彼を眺めながら私は残りのミートパイを急いで口の中に押し込んだ。
…数分後、街の中を警備していた隊長を見かけ、姿勢を正し、話しかけた。
「隊長。ジュリアです。何か御用でしょうか?」
「お、よく来てくれたな。…実はまた上から例の依頼があってな。」
「例の、といいますと…トレーダーの件でしょうか?」
「うむ。お前も知っているように最近、ここムーングロウではトレーダーを生業としてくれる冒険者や商人が減っていて街々の交易に支障を来たしている。そのため、人が確保できるまで私たちガードのような役所勤めの者にトレーダーの仕事を手伝うようにお達しが来ている。このことはお前も知っているな?」
「はい。ですが海上で襲撃者に襲われ、荷物を奪われることが頻発しているとも聞いております。」
「うむ。その通りだ。お前も知っているように私たちガードでも街の外では無敵というわけにはいかんしな。…だが、かといってトレーダーをやめるわけにもいかん、というのが上での話し合いだそうだ。まったく現場の苦労をどう考えているのか…」
「そういう話ですと…次は、私が。ということでしょうか?」
「そういうことになる。」
「なるほど…もちろん職務ということであればやむを得ませんが正直なところ無事に届けられるかといわれますと…」
「だな。しかも最近の襲撃で公的な船は軒並み修理中だ。」
「それではいかがすれば?」
「うむ。確か先日、占い師が殺害された事件で手を貸してくれた者たちがいただろう?」
「えぇ、ユーの街の近くの酒場に集まる冒険者の方々ですね。」
「彼らに手伝ってもらう、というのはどうだ?」
「そ、それはいかがでしょうか? 前回とは違い、今回は何も関係がないことなのですが…」
「まぁ、そこはお前の交渉次第だろうな。とにかく、しばらくはトレーダーの臨時業務についてくれ。頼むぞ。」
そう言って去っていく隊長の後姿を眺めながら不安な予感が当たるものだということを私は実感していた。
「とりあえず、頼んでみるしかありませんね…」
私は黒熊亭へつながるコミュニケーションクリスタルを鞄から出し始めていた。
…ああ、言い遅れました。私はジュリア。ここムーングロウでガードを務めております。
以後、お見知りおきを宜しくお願い申し上げます。
イベント記録
2018年3月26日
久しぶりに使うコミュニケーションクリスタルに少し緊張しながら私は黒熊亭への呼びかけを始めてみた。
「お久しぶりです。ムーングロウのガードのジュリアです。黒熊亭にどなたかいらっしゃるでしょうか?」
「おー、久しぶりだな。何か用か?」
幸いなことに誰かが店にいてるようだ。私のことを知っていて聞きおぼえのある声からすると先日の事件でお会いした冒険者の一人なのだろう。
彼らに少し頼みたいことがある旨を伝えたところ、すぐに来ていただけるとの返事が頂けた。
10分ほど経った後、見知った顔、見知らぬ顔合わせて5名ほどの方がムーングロウ北の桟橋へ向かってきていた。
「お久しぶりです。ジョーダン殿とミント殿は先日お会いしましたね。」
残りの方、一人はテイマーなのだろう。美しいユニコーンを連れている。
一人はまだ幼いようだが、どこか身が軽そうな女性で歩き方は軽快な印象がある。
後の一人は旅人、といったような格好だがどのような仕事なのかは皆目見当がつかなかった。
「おう。で、何だ?」
早速、依頼のことについて説明を求められた私は、隊長に言われたことと同様の話をし、トレーダーの仕事を手伝ってもらえないかということを説明していた。
考えてみるとガードというのに恥ずかしい話だ。反省しなければいけない。
幸いなことに手伝いに関して報酬は当然要求されたものの、快く引き受けて頂くことが出来た。(ただ現在の街の財政では多額の謝礼は難しいのだが…)
数分後、さっそく交易品と運ぶ街の名を確認したところ、魔法のスクロール×20、そして運ぶ街はムーングロウ島より北の方角に位置するベスパーだった。
「少し遠い場所ですが、宜しくお願いします。」
船の準備と航海士は浅黒い肌のジョーダン殿が力強く引き受けられた。いかにもキャプテン、といった姿だが周りには不安そうな顔をしている方々が多い。何か不安になる理由でもあるのだろうか?
『出航っ!!』
仕事ではあるが、このように海に出るのは私も初めてでワクワクしている中、勢いよく船は桟橋を離れ大海原へと飛び出した!
*ドボンッ”
何ということだ‼
ジョーダン殿のペットであるスーパーモンバットが船の発進と同時に勢いよく海面へ落下したではないか!
塩水に濡れたためか羽をばたつかせるだけで船に戻ってこれない彼を見て、すでに先ほどの落ち着き払ったキャプテンの姿はなく、彼の慌てふためく姿があった。あの方をこれほど驚かせるとは、きっと長年の時間をかけて培われた愛情があのモンバットに注がれているということだろう。
どこかから風の声にのり『せっかく大金払ってなつき薬使ったのに…!!』という声が聞こえてきた気もするがこれは波の音が生んだ私の幻聴だろう。
しばらくのち、どうにか船に戻れたモンバットと共に一行はベスパーへの航海を開始した。
程よい暖かさのある潮風を浴びながら航海を楽しんでいたがとにかく船の中は狭い。もちろんせっかく用意していただいた船に文句を言うなどのことはなかったが明らかな小舟に6人とユニコーン、モンバットが乗っているのだ。無理もない。
少し船酔いが始まりそうな気がしたころ、一瞬の水泡の後、海中から多数の魔物が姿を現した。クラーケン、シーサーペント、ウォーターエレメンタル…彼らの目的は明白で、私が持っているトレーダーボックスの中身なのだろう。荷を守るため慌てて船の反対側へと足を走らしたが同様に魔物が目前にまで迫ってきていた。
『ああ、やはり皆様を巻き込んでしまった』と後悔し始めていたが、冒険者の方々は慌てることなく、船上という戦いにくい場所で一体一体と魔物を倒し始めていた。
美しいユニコーンを操り勇敢にクラーケンと戦わせる雪猫殿。
魔物同士が争いあうような音楽を奏でるミント殿。
華麗にクラーケンの触手を避け、魔物のターゲットを逃れているツムギ殿。
シーサーペントの前で慌てずに酒を飲み続けているティウ殿。
ペットのモンバットを叱咤激励するジョーダン殿。
なんと素晴らしい腕前の方々なのか。私は表面上は冷静さを保ちながらも心が躍るのを止められずにいた。
よく見ると一部の者はあまり戦ってはいないようにも見えたがきっとこれも私の眼が潮風にやられてしまっているからだろう。
ベスパーまで半分ほど渡ったところだろうか。何度かの襲撃を撃退し、心が緩んでいたのかもしれない。船の縁に腰かけていた私は突如、海中から飛び出してきた触手に体を弾き飛ばされた。
…数分後、手当を受けながら目を覚ました私は自分がやられてしまっていたことを知り、慌てて自分の荷物を確認した…が、既に時は遅く、海中の魔物にトレーダーボックスを奪われてしまっていることに気付いた。
あと少しというところで…皆々に会わせる顔もなく、うなだれていた私だったが、もう一度挑戦しよう!と力強く皆に声を掛けて頂き、私たちは再びムーングロウへと踵を返した。
損失を上役にどう報告するか悩んでいた私だったが、『ツムギのしゃっくりで船が揺れて海に落ちたことにしたらどうだ?』というアドバイスを受けた。
名案だ。
私は感謝し、慌ててメモを取り始めていた。
ムーングロウの桟橋に再び戻った私は、何事もなかったかのように再度トレーダーから指定の荷物と次の行き先であるニューマジンシアへの地図を受け取った。
既に夕暮れが近づく中、湿った潮風を浴びながら二回目の航海が始まった。
「ニューマジンシアはベスパーより近いはずです!頑張りましょう!」
「え?ニュジェルムって言わなかったか?」
先行きが不安になった。最初の出航前にも皆が不安そうな顔をしていた理由が私にも少し分かった気はした。
皆が軽口を叩きあう中、何度かの襲撃を無事に乗り越え、ニューマジンシアの港へと船が到着した。
ほっと息を吐き、桟橋に足を踏み入れた私はニューマジンシアの砂交じりの風を感じながら、夕暮れに美しく輝くニューマジンシアの街を眺めていた。
ようやく辿り着いた私にニューマジンシアのトレーダーが「こいつはサービスだ」と言いながら大きな岩を渡してきた。これだけ疲れている相手に対して一体何のサービスだというのか。カっとなりかけた私だがもしかするとこれも貴重なものなのかもしれないと思い直し、黒熊亭の冒険者の方々へ譲り渡すことにした。
トレーダーの職務を果たすことが出来た私は黒熊亭の冒険者たちに礼を言い、再びムーングロウのガードとしての職務に戻り、今も働いている。また彼らと共に旅に出る機会があるのを密かに心待ちにしながら。
“Guards!! Guard!! Guards!!”
『野蛮な行為に後悔するがよいっ!!』
エピローグ
「ツムギ殿のしゃっくりが船を…」
「ふざけるなっ!!」
無事トレーダーは成功させたがしばらく出世は望めそうにないようだ。まだ平凡なガードの仕事が続くのだろう。
(終了)
- 最終更新:2018-03-28 02:12:39