第六回 『ダンジョン・ヒスロス』 

スフィーダからの依頼。それは黒デーモンを操れるという言い伝えの書物“青の魔術書”を持ち、姿を消したスフィーダの弟子ロレーナを探すというものだった…

登場人物

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スワロー
 33歳。ジェロームの漁師。バツイチ。
あまり漁師としての腕は良くなく、生活費稼ぎに依頼があれば旅人や街の者を船に乗せて運ぶといった仕事を請け負っている。がめついタイプ。

イベント記録

2018年6月22日
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魔女スフィーダから依頼を受けて、数週間。今もロレーナの行方は分からず、黒熊亭には今日も冒険者たちが集まり、マスターと何といったこともない会話をしていた。

ウェイブ、雪猫、メルが店にちょうど顔を合わせたのと時を同じくして黒熊亭のコミュニケーションクリスタルから声が鳴り響いた。

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「どなたか黒熊亭にいらっしゃいませんか? ラウルです。」
スフィーダの甥ラウルからだ。

「いるよ。どうしたんだ?」
「実はロレーナの行方の手掛かりがつかめそうなのです。詳しくはジェローム南東の船着場で説明いたします。お力を貸して頂けませんか?」

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どうやら何かの情報をラウルが掴んだようだ。
黒熊亭の冒険者たちはマスターを除いて、ジェロームへ向かい、店を後にした。

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つむぎも合流し、ジェロームについた冒険者たちは街中にあるテレポーターからジェローム南島の船着場にいるラウルを見つけた。

「ああ、皆さん。来て頂き、ありがとうございます。」
日に焼けた顔でラウルは冒険者たちに笑いかけ、話を続け始めた。


「実は叔母に頼まれて、私もロレーナの情報を集めていたのですが、どうも偶然この街で彼女を見かけた方たちがおり、どうも彼女はこの島に住むスワローという漁師に何かを頼んでいたそうなのです。…そこで、彼から話を聞くためにこちらに来たのですがどうも先ほど漁に出航したようです。」

「ただ…残念ながら私には何というか…船を購入するだけの財布の余裕もなく…」
申し訳なさそうに尻すぼみになっていく彼の言葉を聞き、冒険者たちは船を一隻購入し、彼を追いかけることとなった。

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船を購入してきた雪猫はつむぎにドライドックされた船を渡し、海上には購入してきたばかりの新しい船が姿を現した。

“さぁ、向かおう!”
勢いよく船に乗り込もうとした冒険者たちだったが一人、ラウルは再びすまなそうに後ずさりを始めていた。どうやら彼は船の類が苦手なようだ。船酔いでもひどい性質なのだろうか?

しかたなく、ラウルを除いた4人はジェロームの港を出港し、スワローがよく漁をしているという南の海へと船を走らせた。

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船が出港して幾ばくかの時間が経った後、海上で一人釣りをしている冴えない麦わら帽子の男の姿が目に飛び込んできた。

「うぉ!」
ふと気付かぬ間に、近くにまで寄ってきていた船に、彼は驚いたようだ。
名前を聞いたところ、どうやら彼がスワローという漁師で間違いはないようだった。

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冒険者たちがロレーナの情報を得るため、彼に青い魔術書を持ったエルフの女性を知らないか聞いたところ、少し考えた後に、彼はピンときたような顔で手を叩いた。

「あー、そのエルフの女なら確かに乗せたぜ? で、それが何だってんだ?」
「その彼女の行方が知りたいんだ。」

ようやく情報がつかめると思い、勢い込んで、その行方を聞く冒険者たちを眺めながらスワローはニヤリと笑った。

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「そうだなー、どうだったかなー?…ま、漁師の仕事も楽じゃねぇからよ?」
何やら含みを持たせるようにニヤニヤと笑う彼が求めているものに気付いたのだろう、メルは懐から財布を取り出し、彼にいくらかの金貨を支払った。

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「お、分かってるじゃねぇか。くっく、ありがとさん。
そのロレーナっていうエルフを送ったのはヒスロス島だ。何でその場所に用があったかは知らねぇが、あんな危険な場所によく行くもんだぜ。」

どうやら彼女が向かった場所はヒスロス島のようだ。古くから悪魔族の魔物が多く生息するダンジョン、霊性の背徳のダンジョンと呼ばれるヒスロスがその口をあけたたずむ危険な炎の島だ。

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ラウルに報告をした後、冒険者たちはその足でスフィーダの住むホワイトマーブル島へ向かい、彼女の家を訪れた。ちょうど黒熊亭を訪れていたガントレットにも連絡がつき、合流することが出来ていた。

「何や何や、がやがやとあんたらか。どないしたんや?」
「ロレーナの行方の情報が掴めたよ、ヒスロス島だ」

彼女は、ぱっと笑顔になったかと思ったがすぐにその場所の危険さを思い出したのか顔を引き締めた。

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「力、貸してくれるか?」

いつになく真剣な彼女の言い方に、冒険者たちは快諾し、すぐにヒスロス島へとゲートを開いた…

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数分後、ヒスロスの入り口へ辿りついた冒険者たちは生臭い風と魔物の声が鳴り響くダンジョンの中へと足を踏み入れていった。

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ヒスロスのダンジョンにはインプ、ガーゴイル、デーモンなどの悪魔族からヘルハウンドといった炎を吐く獣が多数生息しており、深部は黒の肌を持つバルロンも生息しているという。恐らくはロレーナが向かった目的はその深部だろう。古い砦のような構造のダンジョンを進みながら、冒険者たちは徐々に深部へと進んでいた。

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地下2階では侵入者の行方を阻むテレポーターのトラップが冒険者たちを苦しめた。正しい通り方でなければ元の場所へと引き戻されてしまい、冒険者たちはその攻略に手間取ったもののどうにか次の階層へとたどり着くことが出来た。

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深部の階層が近づくにすれ、魔物の数と質は増し、ついにはバルロンもその姿を現し始めていたがロレーナの姿はまだ見つからずにいた。

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最深部にまでたどり着き、かつては牢屋に使われていた場所だろうか? 奥の小部屋の扉を冒険者が開き、室内を見渡しところ、一人の倒れた女性の姿が彼らの目に飛び込んできた。

近くにより、顔を確認したスフィーダはみるみると顔が青ざめ、膝をがっくりと落とした。
どうやら彼女が探していたロレーナのようだ。その遺体は背中にひどい火傷を負い、血を流しながら倒れていた…
青の魔術書が手元にないことに気付いた冒険者たちがスフィーダに声をかけたが、彼女にはそのことはもはやどうでもいいようだった。…数分後、スフィーダは冒険者たちには先に戻るように伝え、冒険者たちはロレーナの遺体とスフィーダをその場に残し、黒熊亭へと戻っていった。

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それからしばらくの時間が経った後、黒熊亭に来たスフィーダは、ロレーナが死んだことを笑い飛ばすかのように彼女への悪言を吐きながら陽気に振舞っていた。

ロレーナの遺体の近くには一つの箱があり、彼女の服のポケットには一つの鍵が入っていた。その鍵を使い、開けた箱の中には探していたもう一つのもの『青の魔術書』が残されていた。もしかするとロレーナがこの箱の中へ閉まっていたのだろうか。

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「何や、こんなん隠して…、魔術書は自分で持ってへんと意味ないやろ!ほんまにあのアホは…」
悪態をつきながらスフィーダは魔術書を取り出し箱を蹴り飛ばした。

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“ガタン”と音が鳴り、箱の中で何かが落ちたような音がしたがスフィーダは気付かなかったのだろう、すぐに店を後にしていった。

残された箱の中をもう一度見た冒険者たちは中に一冊の日記が入っているのを見つけた。
どうやら箱を蹴った衝撃で落ちたようだ。

【日記の中身】
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日記の中身を読んだ冒険者たちはゆっくりとその日記を閉じた後、グレンに日記を手渡し、スフィーダに渡してもらうように頼み、望まぬ結果にやるせない気持ちになりながら一人ずつ帰途につくのだった…

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(エピローグへ続く)

  • 最終更新:2018-07-16 06:48:46

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